珍しく、コンラッドは顔を歪めていた。

苦悶の表情と呼べるほど露骨ではないが、それがおれの脱走癖に対する非難の表れであることは明白だった。 要するにそう、今日もおれは一人で外を出歩いてしまった、だからコンラッドは怒っていた。

それで、おれは謝ろうとしたんだ。だけど遮られて。

 

「悪い獣に捕まったらどんな目に遭うのか、ご存知ないなら…教えましょうか」

 

それで――― なんでおれ、服を脱がされてんの?

ここは風呂じゃなくてベッドだ。裸になる場所じゃない。ていうかそもそもコンラッドは怒っていたはずで、それが何故こんな行為に結びつくのだか。

分からないまま混乱して、おれはコンラッドの手が器用に動くのをただ見守る。

 

「…おとなしくしてないで、ちゃんと暴れてくださいよ。こんなことをされたら」

「……?」

 

上半身の服をすっかり剥がれたおれを見下ろして、コンラッドは少し困ったように言った。

そして、おれの反応のなさにますます困った顔をして、小さく溜め息を吐いた。

 

「分かりました、教えます。全部教えますよ」

 

何を、と聞き返す前に、コンラッドの顔がおれの首筋に近付いた。

 

「ひぁ……っ」

 

生温く湿ったものが、鎖骨から顎までを這った。ライオンの、舌だ。

本能的な何かが危機感を伝えてくる。間を置かずに再度首筋を舐め上げられて、背筋がぞくりと震えた。

 

「何…、コン…ラッド…?」

 

何度も何度も繰り返し喉元を湿らされて、その度に危機感は増した。耐えかねて身を捩ろうとするも、意外にしっかりと押さえ込まれてしまっている。

 

「っひゃ!?」

 

突然、歯を立てられた。痛みはほとんどなかったけれど、その瞬間に本能的な危機感はピークに達した。

―――― 食べられる!

閃くようにその五文字が浮かび、おれは慌てて暴れ出した。そしてようやく、両手首が完全に押さえ込まれてしまっていることに気付いた。必死でばたつかせた足は無意味に宙を蹴っている…両足の間にコンラッドの体が挟まっているから。

逃げられない。どうやっても。

 

「こうなってから暴れても遅いんですよ。もっとも、最初から暴れたところで無意味でしたが」

「あ、……ァッ」

 

ライオンの右手がおれの胸先を摘み、軽く揉むように動かす。不思議に息の上がるその感覚の名前を、おれは知らない。

体を逃がしたいのに、おれの抵抗は全て的確に封じ込められている。ただただ耐え忍んでいると、おれが刺激に慣れる頃を見計らったように、不意に胸先をカリリと引っ掻かれた。

 

「い、ああぁ……ッ」

 

突然の違う刺激に、体がビクンと跳ねた。

されるがままを強要される状態で、胸先への苛みと首周辺への舌の蹂躙が続けられる。

靄がかってくる思考の中で、本能の警告だけは確かだ。

…おれ……、食べられちゃう。