まるで明けない夜のようだ。

 

瞳の色をそう直喩されて、ユーリは意外そうに瞬きした。

今夜は月が優しく、コンラッドの部屋はさながら湿った肌を癒す薄明かりの静謐である。シーツの下、肌を冷やさないようにとユーリを大切に抱き込むコンラッドの薄茶の瞳には、月よりも優しい銀が散っている。こんな夜には、ユーリの稀有な漆黒もその魅力を一層増そうというものだ。

それにしても 『明けない夜』 とは、とユーリは考える。

それは歌詞などでよく耳にする表現の一種であり、その意味するところは。

 

「……絶望」

 

明けない夜、終わりのない夜、朝の来ない夜。

文学に明るくはないユーリでも、そうした比喩が悲しげに詠われてきたことぐらいは知っている。

「どうしました」と覗き込んできたコンラッドに、ユーリはそれを説明した。コンラッドの言葉にそんな意図がないことは理解している、と付け加えて。

 

「眞魔国では、そういう暗い例えには使われないの?」

 

言われて改めて、コンラッドも自分が口にした表現について考えてみる。確かにそれは古典的な『絶望』の象徴であった。

だがユーリのどこまでも深く澄んだ瞳にはやはり、その形容が相応しいとコンラッドは思う。全波長を吸収する無彩色。穢れない永遠の闇。ただし絶望ではない。そもそも、それが絶望の象徴であることにピンとこない。コンラッドは、特に夜明けを待ち望みはしないからだ。

 

「ユーリも、明けない夜には苦痛を感じますか」

「え、うーん……なんか辛いイメージはあるよ」

 

そういうものだろうか。

むしろ今のコンラッドの心情としては、このまま少しでも長く夜を堪能したいほどだけれど。

 

「でも…よく考えたら、何が辛いのかハッキリしないかもな。夜だって野球はできるわけでー…」

 

明かりのない昔はともかく、現代人は夜続きでも平気だよなぁ、植物が育たなくて飢えるとか、でもそれが精神的苦痛の理由ってのも違う気するし、などと一度考え始めたらとことんまでとユーリがうんうん唸り始める。

コンラッドの何気ない問いかけにも本気で悩んでくれるのは嬉しいが、もう夜も遅い。あまり頭を働かせて眠りが浅くなっては可哀想だ、とコンラッドが話題の転換を図ろうとした時だった。

 

「あ、分かった。夜が辛いっていうより、太陽を見られないのが辛いんじゃないかな」

 

太陽見ると希望が沸くっていうか元気出るじゃん、とユーリが微笑むので、コンラッドはなるほど自分は夜など怖くはないはずだと納得した。

太陽なら今も腕の中にある。